会社の釣り部が教えてくれた「暮らしのバランス」

人間関係

職場に現れた“釣り狂い課長”が教えてくれた、仕事と情熱のバランス

2015年の冬、東京勤務にようやく慣れ始めた頃だった。
課長が突然「釣り部を作る!」と声を上げた。
きっかけはほんの思いつきだったと思う。
だがその一言から、会社の空気が少しずつ変わっていった。

課長は釣り経験ゼロ。それでも声のかけ方は豪快だった。
専務、営業部の猛者たち、他部署の船釣り経験者を次々に勧誘し、
まるで社内プロジェクトのような熱量で釣り部を立ち上げた。
「俺たちで伝説を作ろう!」と笑う課長。
正直、最初は冗談半分だと思っていた。
だが、次第にその勢いが“冗談では済まないレベル”に達していく。

昼休みになると釣り雑誌を広げ、
会議中でも突然「この仕掛けはさ、どう思う?」と話を振ってくる。
業務中に釣具屋へ電話することもしばしば。
釣り部のチャットは常に課長のメッセージで埋まり、
もはや「社内釣り推進室」と化していた。
誰も止められなかった。
その暴走ぶりが、どこか憎めなかったからだ。

私も気づけば巻き込まれていた。
子どもの頃に親父と少し釣りをした程度の経験しかなかったが、
課長の勢いに押される形で参加を決めた。
初めての船釣り。私は装備もなく、
100円均一のカッパ姿で船に乗り込み、船長に怒られた。
潮の流れを読まずに仕掛けを落とすと、
周囲の糸が絡まり「お祭り」状態。
慌てて巻き上げるも、今度は隣の人の仕掛けを引っ掛ける。
船の上は、まるで職場の縮図のようだった。
誰かが焦れば、全体が止まる。
一人ひとりの動きが、互いに影響し合う。

そして、最も怒られていたのは課長だった。
それでも彼はめげない。
「こういう失敗が大事なんだよ!」と笑い飛ばす。
その姿を見て、不思議と励まされた。
完璧ではなくても、楽しそうに動き続ける。
その“はみ出し方”が、職場に少しの余白を生んでいた。

釣りから戻ると、今度は家庭で問題が起きた。
服は魚臭く、道具は汚れている。
妻からは「台所ではさばかないで!」と厳命され、
ベランダで魚をさばいた。
家の中には釣り道具が増え、部屋は常に魚の匂いがした。
「仕事関係だから」と言い訳しつつも、
家族には迷惑をかけっぱなしだったと思う。

それでも今振り返ると、あの課長から学ぶことは多かった。
情熱の方向は間違っていたかもしれない。
だが、あの人は「本気になること」の大切さを教えてくれた。
どんなに小さなことでも、心から夢中になれる人は強い。
そして、そういう人の周りには、なぜか人が集まってくる。

仕事とプライベートの線引きができていないようでいて、
彼は「情熱が人を動かす」という真理を知っていたのかもしれない。
私もあの頃の経験を経て、
“きちんと働きながらも、心の中に遊びを持つ”ことの大切さを感じている。

仕事は真剣勝負。でも、心はいつも少しだけ“釣りモード”で。
課長の破天荒さの中には、そんな余白の生き方があったのかもしれない。

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