小さな釣り部が映し出した、組織のリアルと人間関係の潮流
釣り部の合宿が終わってしばらく経った頃、
職場の空気が少しずつ変わり始めた。
A専務とB社長を“持ち上げよう派”と、
純粋に“釣りを楽しもう派”の対立が起きたのだ。
表面上は和気あいあいとしていたが、
裏では小さな派閥争いが始まっていた。
私は最下っ端なので直接関わることはなかったが、
飲み会の席で幹部メンバーの意見が割れたという話はすぐに耳に入った。
A専務・B社長派は課長ひとり。
課長は次第に孤立していった。
彼にしてみれば、
「自分が立ち上げた釣り部を乗っ取られた」と感じたのだろう。
その頃から、彼は一人で海に出るようになった。
毎週末、船に乗り、釣果を写真付きで報告してくる。
仕事そっちのけで釣りに夢中になりながらも、
どこか寂しさを隠せない表情だった。
私はそんな課長に付き合い、
たまに一緒に船釣りに出かけた。
海の上では、課長はいつもの“暴走上司”とは違い、
穏やかで、話好きな普通の人に戻る。
潮の流れを読み、仕掛けを変えながら、
「会社もこうやって流れを読むことが大事だよな」なんて言う。
その一言に、私は少しだけ救われた気がした。
あの破天荒さも、根底には“人とのつながりを大事にしたい”気持ちがあったのだろう。
釣り部の活動は、その後も細々と続いた。
だが2019年、コロナショックがすべてを変えた。
グループ会社の業績が悪化し、B社長が退任。
その派閥の中心にいた課長やお偉いさんたちは、
次々と他部署や海外へ異動になった。
会社という海の中で、
釣り部のような小さな派閥争いが、そのまま組織全体の縮図のように見えた。
不思議なことに、私自身もいつの間にか“社長派”に組み込まれていたようだった。
異動は免れたが、出世コースは一旦ストップ。
それでも不思議と後悔はなかった。
課長に振り回されながらも、あの5年間は確かに充実していた。
釣り部で築いた人との縁は、
今でも私の中で大切な財産だ。
今でも当時の仲間たちと連絡を取り合い、
時折飲み会や船釣りに誘ってもらう。
肩書きも部署も関係ない、
“釣り仲間”というゆるやかなつながり。
それは、会社という海を漂いながら見つけた
“本当の人間関係”なのかもしれない。
海の上では、潮の流れに逆らっても釣れない。
職場も同じだ。
誰かに合わせたり、潮に流されたりしながら、
自分なりのリズムで糸を垂らす。
思い通りにいかないこともあるけれど、
だからこそ、自分らしい働き方が見えてくる。
釣り部という小さなコミュニティを通して、
私は“派閥の海”をどう泳ぐかを学んだ。
必要なのは、勝つことでも群れることでもない。
どんな波の中でも、自分のバランスを保てる心の錨を持つこと。
それが、仕事を続ける上でのいちばんの力なのだと思う。
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