車を手放して見えてきた、家族の“歩く時間”の豊かさ

暮らしの楽しみ方

手放すことで得たもの――お金よりも大きな「家族の一体感」

2021年の秋。
長年乗ってきた車を、とうとう手放した。
理由はシンプルで、教育費を少しでも捻出するためだった。

駐車場代、ガソリン、税金、車検代。
計算してみると、年間でおよそ50万円もの負担になっていた。
それを削減できたのだから、家計としては大きな決断だったと思う。

もともと自宅は駅に近く、スーパーも徒歩圏内。
正直、車がなくても生活には困らなかった。
それでも、「車があるのが当たり前」という感覚から抜け出せず、
なかなか手放す踏ん切りがつかなかった。

そんな生活が一変したのは、車を売ってからのこと。
休日になると、家族みんなで駅前まで歩き、
カフェに入ったり、2駅先の横浜駅まで足を伸ばしたり。
ウィンドウショッピングを楽しむようになった。

車があったころは、「どこか遠くに行く」ことばかり考えていた。
けれど今は、「近くを歩く」「ちょっと寄り道する」――
そんな小さな外出が、思いのほか心地いい。

不思議なもので、お金に余裕ができると、
気持ちにも余裕が生まれる。
カフェでのんびり過ごす時間や、外食の回数が増え、
自然と家族の会話も増えていった。

妻と二人で出かけるときは、
車がないぶん、電車に並んで座る時間が増えた。
何気ない会話の中に、ちょっとした“デート気分”も戻ってきた。

そして何よりうれしいのは、
子どもたちが街をよく知るようになったこと。
横浜駅のカフェやショップ、近くの路地裏の雰囲気まで、
「あそこに新しいお店ができたよ」と教えてくれるようになった。
暮らす場所を“好きになる力”が、
少しずつ育っている気がする。

もちろん、デメリットもある。
車がないと、大型ショッピングモールへ行く機会が減り、
肉や魚の質は少し落ちたかもしれない。
でも、週に一度の外食でそれをカバーしている。
家族みんなで同じ食卓を囲む時間が増えたのだから、
それも悪くない。

今思えば、車を手放したのは「失う」ことではなく、
「暮らしを見直す」きっかけだったのかもしれない。
遠くに行くための道具を手放して、
近くを見つめる時間が増えた。

“歩く”という動作の中に、
家族の会話があり、笑いがあり、
季節の風も感じられる。

便利さを減らして、豊かさが増える――
そんな変化もあるのだと、今は素直に思える。

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