破天荒すぎる課長に振り回されて気づいた、リーダーと部下の距離感
釣り部が始動してしばらく経った頃のこと。
親会社のA専務が、グループ会社のB社長と親しいという噂を耳にした。
私はちょうどそのB社長のもとに配属されていたので、二人の関係は肌で感じていた。
どうやらA専務が釣り部の活動を自慢したことがきっかけで、B社長も釣りに興味を持ったらしい。
それ以来、B社長から釣りのお誘いを受ける機会が増え、
釣りの後にはマンションのパーティールームで魚を振る舞う会が開かれた。
私はお手伝い役として駆り出され、まるで“釣り部兼接待部”のような立ち位置になっていった。
後から思えば、課長が釣り部を立ち上げたのは、
B社長の懐に潜り込むための“社交プロジェクト”でもあったのだろう。
その第一の子分が私。
仕事と趣味の境界線が消えていくような日々の中で、
気づけば課長の「釣り構想」に巻き込まれていった。
正直、大変なことも多かったが、
お偉いさん方にかわいがってもらい、得た経験も少なくはなかった。
そんなある日、課長が言い出した。
「A専務とB社長も誘って、釣り部で合宿をしよう!」
それは、早朝の船釣りから夜の宴会まで詰め込んだ、1泊2日の“会社イベント”だった。
課長は誰よりも張り切っていた。
恐らく個人で50万円近く費やしていたのではないか。
会議中も合宿の段取りを練り、周囲があきれるほど熱を上げていた。
私も例に漏れず、巻き込まれた一人だ。
「ドローンで撮影したい」と言われれば操縦練習を任され、
「エアガンで風船を割る演出をやりたい」と言われればギミックを作らされ、
「コスプレ劇をやる!」と宣言されれば、服作りと練習に付き合う。
まさに課長の“暴走ロード”である。
それでも、誰も止められなかった。
課長の熱量が、どこか本気で楽しそうだったからだ。
しかし、事件は起きた。
合宿の夜、課長が用意した照明設備のコンセントがショートし、
コテージの中が煙で包まれた。
あわや火事寸前。参加者全員が慌てて逃げ出した。
翌朝、課長は皆からこっぴどく叱られ、
さすがに落ち込んでいた。
だが、その背中を見ながら私は思った。
この人は、本気で何かを楽しもうとすると、
いつも“やりすぎてしまう人”なんだ、と。
家に帰れば、家族にも迷惑をかけていた。
ドローン練習中に次女にぶつけて泣かせ、
ギミックづくりで部屋を占領し、
妻には衣装の縫製まで手伝わせてしまった。
「会社の釣り部って、ここまでするものなの?」と苦笑された。
けれど、その混沌の中にも、私は一つの学びを見つけた。
それは、**“暴走する上司ほど、周りを動かす力を持っている”**ということ。
効率や正論だけでは、人はついてこない。
ときに無茶をして、失敗して、笑われても、
本気で楽しむ姿勢があれば、誰かの心を動かす。
課長はまさにその象徴だった。
仕事の線引きが甘くても、
情熱の純度だけは誰よりも高かった。
あの破天荒さに振り回されながら、
私は“仕事における熱量の意味”を少し学んだ気がする。
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